ロイさんはぼくらの目の前で、巨大な剣に押しつぶされそうになっていた。
「よう、ロイ!元気にしてたか?!相変わらず肌ピカピカじゃねえか、ムカつくな!」
「……お前も、相変わらずだな。いろいろな意味で。お前は妙なもんばかり食べているから、肌が荒れるんだ」
苦しそうな顔一つせず、剣をはじき飛ばすと、眉をひそめて剣の持ち主に言った。
はじき飛ばされた影は、空中でくるりと一回転して着地し、剣を担ぎ上げる。
薄明かりに照らし出されたのは、巨大な剣を担ぎ上げた、肌のかなり出る服を着たお姉さんだった。
「それと……相変わらず、寒そうな格好をしているな」
「寒くなんかねえよ。お前と違って引きこもらずによく動くから、寒くなんかならねえよ!」
真っ白な歯を見せてにかっと笑ったお姉さんは、とても美人だった。
いきなり切り掛かったりしなければ、綺麗なドレスを着ていたら、どこかのお姫様かと思えるくらいだ。
「どのみち、教育上よろしくない。やめろ」
「嫌だね、あたしはこれが楽なんだ」
ロイさんは顔をしかめ、ナジカにあんな格好はするなよ、とぼそっと言った。
「……って、お前!」
お姉さんは、ようやくぼくたちに気づいたらしい。
目をまんまるにすると、づかづかとぼくらに近寄ってきた。
「なんだ、このガキた ち……攫ったのか?まさか、どっかの女に産ませたのか!?てめえ……!」
「落ち着け、何の話だ」
目を三角にして、また剣を構えたお姉さんをロイさんはなだめた。
「じゃあ、そいつら、なんだよ」
「……拾った」
「はぁ!?」
ぼくたちは捨て犬か何かか。
「えと……ぼくら、今ロイさんと一緒に旅をしているんです。ぼくはシイヤ、こっちは妹のナジカです」
お姉さんはぼくを見、ナジカを見て……
「……か……」
「か?」
「かわいいっ……!」
ナジカを抱きしめた。
「てめえ、ロイ、ずりいぞ!こんなかわいい子と毎日一緒に寝てるなんて!」
「だから、その誤解を招く言い方はやめろ……」
ロイさんが、珍しく顔にものすごい疲労の色を浮かべて、頭を抱え、ため息をついた。
今の所ほぼ無視をされているぼくは、開いた口が塞がらなかった。
「ナジカちゃん、あたしはキイナってんだ。”戦い屋”だ」
「戦い屋?雇われ屋とは、どう違うんですか?」
ぼくはやっと、まともにお姉さん……キイナさんに目を合わせてもらえた。
と思ったのもつかの間。
ものすごい勢いで、両方のほっぺたをつねられた。
「いはい!いは!いはいれふ!」
「こんなやつと一緒にすんな!あたしは、戦い専門なんだよ!……お?」
キイナさんはぼくをじっと見ると、「よく見るとかわいいな。もしかして、女の子か?」と聞いてきたので、違います、男です、と答えたら、またほっぺたをつねられた。
「いはいれふぅ!」
ぼくは何となく、奥さんの占いがあたるんだって事が理解した。
たぶん、ロイさんが女運がよくないって言われて思い浮かべていたのは、キイナさんだ……
「やめてやれ、シイヤにはまだお前みたいなやつの対処法を教えていない」
「どういう意味だ!」
「ロイさん、そんな事よりも、シェイナさんを助けにいかないと……」
ああ、そうか、というふうに、ロイさんは手をポンとたたいた。
「キイナ、お前もついてこい。これから、大勢を相手にしなきゃならないんだ。相手は、”血錆”の下っ端の、攫い屋だ。できれば殺さずに済ませたい」
「はあ?なんであたしがお前と手を組まなきゃなんないんだ。大体、血錆の連中相手じゃ、殺したって殺さなくったって、後が面倒じゃんか。」
ナジカが不安そうにぼくを見る。
そうだね。こんな事を話している間にも……
「お願いです、キイナさん。助けたい人がいるんです。手を貸してください」
ぼくが言うのと同時に、ナジカも頭を下げた。
「あ、あたしは、戦い専門であって、そんな甘っちょろい事のためになんか、動かねえの。あたしが戦いたいと思った奴らと戦うから、戦い屋なんだよ!」
キイナさんがそっぽを向いて答える。
そんなキイナさんに、ロイさんが近づいた。
「キイナ」
「な……なんだよ」
「お前のチカラがあれば、ずいぶん仕事が楽になるんだ。頼む、キイナ。俺と一緒に、来てくれ」
そういって、ロイさんはキイナさんの手を取った。
今日の月は、弓張り月。
三日月よりは膨らんでいるけれど、そんなに明るくはない。
なのに、キイナさんの顔が真っ赤になっているのは、よくわかった。
さっきと同じように、キイナさんはそっぽを向いてしまったけれど、ちらりと見える耳は、真っ赤のままだった。
「お……お前のために行くんじゃないぞ!かわいい女の子に頭を下げられたから、行くんだからな!」
「助かるよ。ありがとう、キイナ」
ふっと微笑んだロイさんは、人を殺さなくて済む事にほっとしているようにも見えた。
キイナさんの顔が赤い理由の事など、考えてないみたいだった。
こうして、ぼくらはキイナさんに出会った。
弓張り月は、ぼくらをみて、奇妙な集まりだと笑っているように、浮かんでいた。
「よう、ロイ!元気にしてたか?!相変わらず肌ピカピカじゃねえか、ムカつくな!」
「……お前も、相変わらずだな。いろいろな意味で。お前は妙なもんばかり食べているから、肌が荒れるんだ」
苦しそうな顔一つせず、剣をはじき飛ばすと、眉をひそめて剣の持ち主に言った。
はじき飛ばされた影は、空中でくるりと一回転して着地し、剣を担ぎ上げる。
薄明かりに照らし出されたのは、巨大な剣を担ぎ上げた、肌のかなり出る服を着たお姉さんだった。
「それと……相変わらず、寒そうな格好をしているな」
「寒くなんかねえよ。お前と違って引きこもらずによく動くから、寒くなんかならねえよ!」
真っ白な歯を見せてにかっと笑ったお姉さんは、とても美人だった。
いきなり切り掛かったりしなければ、綺麗なドレスを着ていたら、どこかのお姫様かと思えるくらいだ。
「どのみち、教育上よろしくない。やめろ」
「嫌だね、あたしはこれが楽なんだ」
ロイさんは顔をしかめ、ナジカにあんな格好はするなよ、とぼそっと言った。
「……って、お前!」
お姉さんは、ようやくぼくたちに気づいたらしい。
目をまんまるにすると、づかづかとぼくらに近寄ってきた。
「なんだ、このガキた ち……攫ったのか?まさか、どっかの女に産ませたのか!?てめえ……!」
「落ち着け、何の話だ」
目を三角にして、また剣を構えたお姉さんをロイさんはなだめた。
「じゃあ、そいつら、なんだよ」
「……拾った」
「はぁ!?」
ぼくたちは捨て犬か何かか。
「えと……ぼくら、今ロイさんと一緒に旅をしているんです。ぼくはシイヤ、こっちは妹のナジカです」
お姉さんはぼくを見、ナジカを見て……
「……か……」
「か?」
「かわいいっ……!」
ナジカを抱きしめた。
「てめえ、ロイ、ずりいぞ!こんなかわいい子と毎日一緒に寝てるなんて!」
「だから、その誤解を招く言い方はやめろ……」
ロイさんが、珍しく顔にものすごい疲労の色を浮かべて、頭を抱え、ため息をついた。
今の所ほぼ無視をされているぼくは、開いた口が塞がらなかった。
「ナジカちゃん、あたしはキイナってんだ。”戦い屋”だ」
「戦い屋?雇われ屋とは、どう違うんですか?」
ぼくはやっと、まともにお姉さん……キイナさんに目を合わせてもらえた。
と思ったのもつかの間。
ものすごい勢いで、両方のほっぺたをつねられた。
「いはい!いは!いはいれふ!」
「こんなやつと一緒にすんな!あたしは、戦い専門なんだよ!……お?」
キイナさんはぼくをじっと見ると、「よく見るとかわいいな。もしかして、女の子か?」と聞いてきたので、違います、男です、と答えたら、またほっぺたをつねられた。
「いはいれふぅ!」
ぼくは何となく、奥さんの占いがあたるんだって事が理解した。
たぶん、ロイさんが女運がよくないって言われて思い浮かべていたのは、キイナさんだ……
「やめてやれ、シイヤにはまだお前みたいなやつの対処法を教えていない」
「どういう意味だ!」
「ロイさん、そんな事よりも、シェイナさんを助けにいかないと……」
ああ、そうか、というふうに、ロイさんは手をポンとたたいた。
「キイナ、お前もついてこい。これから、大勢を相手にしなきゃならないんだ。相手は、”血錆”の下っ端の、攫い屋だ。できれば殺さずに済ませたい」
「はあ?なんであたしがお前と手を組まなきゃなんないんだ。大体、血錆の連中相手じゃ、殺したって殺さなくったって、後が面倒じゃんか。」
ナジカが不安そうにぼくを見る。
そうだね。こんな事を話している間にも……
「お願いです、キイナさん。助けたい人がいるんです。手を貸してください」
ぼくが言うのと同時に、ナジカも頭を下げた。
「あ、あたしは、戦い専門であって、そんな甘っちょろい事のためになんか、動かねえの。あたしが戦いたいと思った奴らと戦うから、戦い屋なんだよ!」
キイナさんがそっぽを向いて答える。
そんなキイナさんに、ロイさんが近づいた。
「キイナ」
「な……なんだよ」
「お前のチカラがあれば、ずいぶん仕事が楽になるんだ。頼む、キイナ。俺と一緒に、来てくれ」
そういって、ロイさんはキイナさんの手を取った。
今日の月は、弓張り月。
三日月よりは膨らんでいるけれど、そんなに明るくはない。
なのに、キイナさんの顔が真っ赤になっているのは、よくわかった。
さっきと同じように、キイナさんはそっぽを向いてしまったけれど、ちらりと見える耳は、真っ赤のままだった。
「お……お前のために行くんじゃないぞ!かわいい女の子に頭を下げられたから、行くんだからな!」
「助かるよ。ありがとう、キイナ」
ふっと微笑んだロイさんは、人を殺さなくて済む事にほっとしているようにも見えた。
キイナさんの顔が赤い理由の事など、考えてないみたいだった。
こうして、ぼくらはキイナさんに出会った。
弓張り月は、ぼくらをみて、奇妙な集まりだと笑っているように、浮かんでいた。
PR
カレンダー
| 12 | 2026/01 | 02 |
| S | M | T | W | T | F | S |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | ||||
| 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
| 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
| 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
| 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
プロフィール
HN:
まめがら茶
性別:
女性
自己紹介:
色んな世界の物語を書いています。
大体は異世界・現代ファンタジー。
好きな小説は、
上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』、
荻原規子さんの『白鳥異伝』、
香月日輪さんの、大江戸妖怪かわら版シリーズ。
和を感じられるお話が好きです。
それから、アレックス・シアラーさんの『チョコレート・アンダーグラウンド』も、何度か読み返しました。
佐竹美穂さんの挿絵が小さい頃から好きだったのですが、
小学一年生の時に上橋さんの『虚空の旅人』と一緒に
分厚い上中下巻の『封神演義』を読んだのは無謀だったかな……
絵は、一番好きなのはアルフォンス・ミュシャ、特に『黄道十二宮』です。
大体は異世界・現代ファンタジー。
好きな小説は、
上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』、
荻原規子さんの『白鳥異伝』、
香月日輪さんの、大江戸妖怪かわら版シリーズ。
和を感じられるお話が好きです。
それから、アレックス・シアラーさんの『チョコレート・アンダーグラウンド』も、何度か読み返しました。
佐竹美穂さんの挿絵が小さい頃から好きだったのですが、
小学一年生の時に上橋さんの『虚空の旅人』と一緒に
分厚い上中下巻の『封神演義』を読んだのは無謀だったかな……
絵は、一番好きなのはアルフォンス・ミュシャ、特に『黄道十二宮』です。
カテゴリー
カウンター
ブログ内検索
最新コメント
最新トラックバック
フリーエリア
P R
アクセス解析
