忍者ブログ
腐りかけの豆が、何ヶ月にいっぺん小説を吐き出す場。 主にtwitterに生息。 せめて2ヶ月にいっぺんくらいの更新に持っていきたい。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ロイさんはぼくらの目の前で、巨大な剣に押しつぶされそうになっていた。

「よう、ロイ!元気にしてたか?!相変わらず肌ピカピカじゃねえか、ムカつくな!」

「……お前も、相変わらずだな。いろいろな意味で。お前は妙なもんばかり食べているから、肌が荒れるんだ」

苦しそうな顔一つせず、剣をはじき飛ばすと、眉をひそめて剣の持ち主に言った。
はじき飛ばされた影は、空中でくるりと一回転して着地し、剣を担ぎ上げる。
薄明かりに照らし出されたのは、巨大な剣を担ぎ上げた、肌のかなり出る服を着たお姉さんだった。

「それと……相変わらず、寒そうな格好をしているな」

「寒くなんかねえよ。お前と違って引きこもらずによく動くから、寒くなんかならねえよ!」

真っ白な歯を見せてにかっと笑ったお姉さんは、とても美人だった。
いきなり切り掛かったりしなければ、綺麗なドレスを着ていたら、どこかのお姫様かと思えるくらいだ。

「どのみち、教育上よろしくない。やめろ」

「嫌だね、あたしはこれが楽なんだ」

ロイさんは顔をしかめ、ナジカにあんな格好はするなよ、とぼそっと言った。

「……って、お前!」

お姉さんは、ようやくぼくたちに気づいたらしい。
目をまんまるにすると、づかづかとぼくらに近寄ってきた。

「なんだ、このガキた ち……攫ったのか?まさか、どっかの女に産ませたのか!?てめえ……!」

「落ち着け、何の話だ」

目を三角にして、また剣を構えたお姉さんをロイさんはなだめた。

「じゃあ、そいつら、なんだよ」

「……拾った」

「はぁ!?」

ぼくたちは捨て犬か何かか。

「えと……ぼくら、今ロイさんと一緒に旅をしているんです。ぼくはシイヤ、こっちは妹のナジカです」

お姉さんはぼくを見、ナジカを見て……

「……か……」

「か?」

「かわいいっ……!」

ナジカを抱きしめた。

「てめえ、ロイ、ずりいぞ!こんなかわいい子と毎日一緒に寝てるなんて!」

「だから、その誤解を招く言い方はやめろ……」

ロイさんが、珍しく顔にものすごい疲労の色を浮かべて、頭を抱え、ため息をついた。
今の所ほぼ無視をされているぼくは、開いた口が塞がらなかった。

「ナジカちゃん、あたしはキイナってんだ。”戦い屋”だ」

「戦い屋?雇われ屋とは、どう違うんですか?」

ぼくはやっと、まともにお姉さん……キイナさんに目を合わせてもらえた。
と思ったのもつかの間。
ものすごい勢いで、両方のほっぺたをつねられた。

「いはい!いは!いはいれふ!」

「こんなやつと一緒にすんな!あたしは、戦い専門なんだよ!……お?」

キイナさんはぼくをじっと見ると、「よく見るとかわいいな。もしかして、女の子か?」と聞いてきたので、違います、男です、と答えたら、またほっぺたをつねられた。

「いはいれふぅ!」

ぼくは何となく、奥さんの占いがあたるんだって事が理解した。
たぶん、ロイさんが女運がよくないって言われて思い浮かべていたのは、キイナさんだ……

「やめてやれ、シイヤにはまだお前みたいなやつの対処法を教えていない」

「どういう意味だ!」

「ロイさん、そんな事よりも、シェイナさんを助けにいかないと……」

ああ、そうか、というふうに、ロイさんは手をポンとたたいた。

「キイナ、お前もついてこい。これから、大勢を相手にしなきゃならないんだ。相手は、”血錆”の下っ端の、攫い屋だ。できれば殺さずに済ませたい」

「はあ?なんであたしがお前と手を組まなきゃなんないんだ。大体、血錆の連中相手じゃ、殺したって殺さなくったって、後が面倒じゃんか。」

ナジカが不安そうにぼくを見る。
そうだね。こんな事を話している間にも……

「お願いです、キイナさん。助けたい人がいるんです。手を貸してください」

ぼくが言うのと同時に、ナジカも頭を下げた。

「あ、あたしは、戦い専門であって、そんな甘っちょろい事のためになんか、動かねえの。あたしが戦いたいと思った奴らと戦うから、戦い屋なんだよ!」

キイナさんがそっぽを向いて答える。
そんなキイナさんに、ロイさんが近づいた。

「キイナ」

「な……なんだよ」

「お前のチカラがあれば、ずいぶん仕事が楽になるんだ。頼む、キイナ。俺と一緒に、来てくれ」

そういって、ロイさんはキイナさんの手を取った。

今日の月は、弓張り月。
三日月よりは膨らんでいるけれど、そんなに明るくはない。
なのに、キイナさんの顔が真っ赤になっているのは、よくわかった。
さっきと同じように、キイナさんはそっぽを向いてしまったけれど、ちらりと見える耳は、真っ赤のままだった。

「お……お前のために行くんじゃないぞ!かわいい女の子に頭を下げられたから、行くんだからな!」

「助かるよ。ありがとう、キイナ」

ふっと微笑んだロイさんは、人を殺さなくて済む事にほっとしているようにも見えた。
キイナさんの顔が赤い理由の事など、考えてないみたいだった。


こうして、ぼくらはキイナさんに出会った。
弓張り月は、ぼくらをみて、奇妙な集まりだと笑っているように、浮かんでいた。 



拍手[0回]

PR
前のページ HOME 次のページ
photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
忍者ブログ [PR]
カレンダー
12 2026/01 02
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
まめがら茶
性別:
女性
自己紹介:
色んな世界の物語を書いています。
大体は異世界・現代ファンタジー。


好きな小説は、
上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』、
荻原規子さんの『白鳥異伝』、
香月日輪さんの、大江戸妖怪かわら版シリーズ。
和を感じられるお話が好きです。

それから、アレックス・シアラーさんの『チョコレート・アンダーグラウンド』も、何度か読み返しました。

佐竹美穂さんの挿絵が小さい頃から好きだったのですが、
小学一年生の時に上橋さんの『虚空の旅人』と一緒に
分厚い上中下巻の『封神演義』を読んだのは無謀だったかな……

絵は、一番好きなのはアルフォンス・ミュシャ、特に『黄道十二宮』です。

カウンター
ブログ内検索
最古記事
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
フリーエリア
P R
アクセス解析