昔、大きなカボチャ畑をもっているじい様がいてな。
そのじい様はとても大事にカボチャを育てていたから、じい様の畑には一年中カボチャがなっていて、たいそう美味であり、何より宝石のように輝いていたんだと。
じい様は、必要としてくれれば誰にでもあげようと思っておったが、じい様の嫁さん、とても欲深くケチなばあ様は、じいさんの作ったカボチャで儲けようと思っておったので、毎日えっちらおっちら山を越え、街へもって行っては高く売って帰ってきた。
噂を聞きつけた貴族が、驚くような値段で買い取ることを知ってからというもの、さらに欲深くなりおった。
わざわざ街へでなくても、貴族達は馬車に乗ってやってきて、たくさん荷車に積んで帰っていったからの。
ばあさんはじいさんに、より美しく、たくさんカボチャを作るようにとじい様に言いつけた。
じい様はそんな風にカボチャが売られていくのは嫌だったが、ばあ様には逆らえなかったから、毎日カボチャに、「どうかお前達が優しい人のもとへいって、腐り廃れること無く愛でてもらえますように」と呟いておった。
ある日、じい様が畑にいくと、ひときわ輝くカボチャを見つけた。
近づいて見ると、そのカボチャには顔のようにも見えるしわと、爪ほどの大きさの虫食いがある、不思議なカボチャだった。
じい様は妙に愛着がわいてな、すぐにばあ様にも見せたくなった。
けれどな、ちょうどカボチャをかいにきた貴族を見送ったばあ様は、一目するなり、じい様を叱りつけた。
「こんな醜くて虫食いさえあるカボチャなぞ、その辺のごろつきだってかわないよ!すぐに捨てておいで!」
じい様は悲しみながら、カボチャを畑の端の方に置きにいったが、どうしてもそのカボチャが気になってしまって、夜も眠れん。
次の日の朝になって、じい様はそのカボチャの様子を見に行った。
するとカボチャは、昨日ツタから切ったのに、自分からちょろっと、ツタをはやしておった!
じい様は喜んで、毎日様子を見に行っては、水をやり、肥料をやり、まるで子どものように育て続けた。
ばあ様にはナイショでの。
カボチャはちょっとずつ、ちょっとずつツタをのばして、ようやく地面にツタが届くと、ツタから根を生やして、またちょっとずつ、ちょっとずつ大きくなった。
カボチャは不思議と、腐ることも無く、大きくなり続けた。
そして、顔に見えるしわも、徐々にはっきり顔の形になっていった。
けれども、半年ほど過ぎたころ、運悪くばあ様に見つかってしまった。
「なんだい、この不気味なカボチャは!あの時捨てろと言ったろうが!」
ばあ様はそばにあったスコッブでカボチャをたたき壊そうとしたがな、カボチャはびくともせず、スコップがひん曲がってしまったと。
かんしゃくを起こしたばあ様は、ひん曲がったスコップを振り回して暴れ回り、それが自分の頭にぶつかって死んでしまったそうだ。
じい様は、ばあ様が死んだことを悲しんだ。あんなばあ様でも愛していたからだ。
それからというもの、じい様はすっかり元気をなくしてしまった。
畑はだんだん荒れていき、じい様が大事に育てていたカボチャも徐々に腐って廃れていったが、あの不思議なカボチャだけは、じい様が病気で死んじまったあとも、いつまでもそこに生えていて、何十年、何百年と、そこでじっと、かわっていく世の中を見ていたんだと。
ある時な、一人の少女が遠くの方から一人、かつてカボチャ畑だった荒れ地の向こう側の森へ向かって歩いてきた。
少女はずいぶん長い間何も食べていなくて、ふらふらしていたが、荒れ地の端できらきらと光る何かに惹かれて近づいた。
大人も一抱えに出来ぬほどの大きさになったあのカボチャだったのだよ。
その少女は最初、カボチャを見て食べようと思ったが、ふと思いいたって、懐から何かを取り出した。
それは短い棒だったが、それをひとふりすると、なんとカボチャが口をきけるようになったのだ。
そう、その少女は魔女だったのだ。
「何故わしを食べずに、口をきけるようにした?」
「だっておまえ、おいしくなさそうなんだもの。固そうだし、光ってる。」
「固いのはそうだが、わしはじい様に愛情たっぷりに育てられたから、うまいぞ。それでも食わぬか」
少女はうーんとうなりましたが、それよりも、としゃがみ込んでカボチャと目を合わせると、にっこり笑ってこういったそうな。
「私はそこの森に住もうと思ってるんだ。世の中はどんどん変わっていくけど、ここは変わってなさそうだから。ここに私たちの森を作って、お前にはその入り口の目印になってほしい。」
そういうと、少女はカボチャに名前を付けた。
”虫食い泣きぼくろのジャック・オー・ランタン”とな。
それからずーっと、そのカボチャは、長く世を見てきたが故の知識と、じい様や魔女の少女にもらった愛情とを、この森に逃げてきた吸血鬼や狼男やそういう者たちに分けてやって、腐ること無く、生き続けたんだと。
「ねえ、その泣きぼくろは今も生きてるの?」
とんがり帽子を被り、いたずらそうな目をした少女が問いかけた。
「さてなあ……どうだろうなあ。」
「もう、ごまかさないでよ!」
「リンネ、そろそろ帰らないと怒られるぞ。」
ふさふさの耳を持つ少年が迎えにくるまで、少女はここで物知りな彼の話を聞くのが日課になっている。
「少なくともな……」
「なあに?」
「そのカボチャも、ずいぶん年老いたが、やっぱり人に愛でられるのは嬉しいことだったんだよ。」
「答えになってない!」
少女はほおを膨らませ、彼は笑った。
「わしもずいぶん長い間忘れられていたが、お前達と話が出来て嬉しいよ……また来ておくれ。」
彼は空を見上げると、そのしわしわの顔をめいっぱい歪ませて、再び笑った。
すっかり世の中から忘れられた、深い深い森の入り口。
森の上には、魔女や蝙蝠男が飛び交っている。
住人も増え、入り口には滅多に人がこなくなったが、彼は今でも誰かに愛されている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
泣きぼくろのジャック・オー・ランタンは、もとはずいぶん前に私が描いた絵です。
その絵には一応言葉が添えられていまして、今書くなら、こうなりますかね。
『
昔、たった一つの虫食いで捨てられてしまったカボチャは、すっかり長い間忘れ去られていましたが、魔女の少女と狼男の少年に見つけ出されたことによって、またその大きな口で自慢の知識を披露することになったのです。
二人が種族を超えて結ばれたあとも、彼はずっとそこにいて、誰かに愛され続けながら、みんなにたくさんの知恵と愛情を与え続けたのです。
』
なんとか、ハロウィンに間に合ってよかった……
HAPPY HALLOWEEN!!!!
そのじい様はとても大事にカボチャを育てていたから、じい様の畑には一年中カボチャがなっていて、たいそう美味であり、何より宝石のように輝いていたんだと。
じい様は、必要としてくれれば誰にでもあげようと思っておったが、じい様の嫁さん、とても欲深くケチなばあ様は、じいさんの作ったカボチャで儲けようと思っておったので、毎日えっちらおっちら山を越え、街へもって行っては高く売って帰ってきた。
噂を聞きつけた貴族が、驚くような値段で買い取ることを知ってからというもの、さらに欲深くなりおった。
わざわざ街へでなくても、貴族達は馬車に乗ってやってきて、たくさん荷車に積んで帰っていったからの。
ばあさんはじいさんに、より美しく、たくさんカボチャを作るようにとじい様に言いつけた。
じい様はそんな風にカボチャが売られていくのは嫌だったが、ばあ様には逆らえなかったから、毎日カボチャに、「どうかお前達が優しい人のもとへいって、腐り廃れること無く愛でてもらえますように」と呟いておった。
ある日、じい様が畑にいくと、ひときわ輝くカボチャを見つけた。
近づいて見ると、そのカボチャには顔のようにも見えるしわと、爪ほどの大きさの虫食いがある、不思議なカボチャだった。
じい様は妙に愛着がわいてな、すぐにばあ様にも見せたくなった。
けれどな、ちょうどカボチャをかいにきた貴族を見送ったばあ様は、一目するなり、じい様を叱りつけた。
「こんな醜くて虫食いさえあるカボチャなぞ、その辺のごろつきだってかわないよ!すぐに捨てておいで!」
じい様は悲しみながら、カボチャを畑の端の方に置きにいったが、どうしてもそのカボチャが気になってしまって、夜も眠れん。
次の日の朝になって、じい様はそのカボチャの様子を見に行った。
するとカボチャは、昨日ツタから切ったのに、自分からちょろっと、ツタをはやしておった!
じい様は喜んで、毎日様子を見に行っては、水をやり、肥料をやり、まるで子どものように育て続けた。
ばあ様にはナイショでの。
カボチャはちょっとずつ、ちょっとずつツタをのばして、ようやく地面にツタが届くと、ツタから根を生やして、またちょっとずつ、ちょっとずつ大きくなった。
カボチャは不思議と、腐ることも無く、大きくなり続けた。
そして、顔に見えるしわも、徐々にはっきり顔の形になっていった。
けれども、半年ほど過ぎたころ、運悪くばあ様に見つかってしまった。
「なんだい、この不気味なカボチャは!あの時捨てろと言ったろうが!」
ばあ様はそばにあったスコッブでカボチャをたたき壊そうとしたがな、カボチャはびくともせず、スコップがひん曲がってしまったと。
かんしゃくを起こしたばあ様は、ひん曲がったスコップを振り回して暴れ回り、それが自分の頭にぶつかって死んでしまったそうだ。
じい様は、ばあ様が死んだことを悲しんだ。あんなばあ様でも愛していたからだ。
それからというもの、じい様はすっかり元気をなくしてしまった。
畑はだんだん荒れていき、じい様が大事に育てていたカボチャも徐々に腐って廃れていったが、あの不思議なカボチャだけは、じい様が病気で死んじまったあとも、いつまでもそこに生えていて、何十年、何百年と、そこでじっと、かわっていく世の中を見ていたんだと。
ある時な、一人の少女が遠くの方から一人、かつてカボチャ畑だった荒れ地の向こう側の森へ向かって歩いてきた。
少女はずいぶん長い間何も食べていなくて、ふらふらしていたが、荒れ地の端できらきらと光る何かに惹かれて近づいた。
大人も一抱えに出来ぬほどの大きさになったあのカボチャだったのだよ。
その少女は最初、カボチャを見て食べようと思ったが、ふと思いいたって、懐から何かを取り出した。
それは短い棒だったが、それをひとふりすると、なんとカボチャが口をきけるようになったのだ。
そう、その少女は魔女だったのだ。
「何故わしを食べずに、口をきけるようにした?」
「だっておまえ、おいしくなさそうなんだもの。固そうだし、光ってる。」
「固いのはそうだが、わしはじい様に愛情たっぷりに育てられたから、うまいぞ。それでも食わぬか」
少女はうーんとうなりましたが、それよりも、としゃがみ込んでカボチャと目を合わせると、にっこり笑ってこういったそうな。
「私はそこの森に住もうと思ってるんだ。世の中はどんどん変わっていくけど、ここは変わってなさそうだから。ここに私たちの森を作って、お前にはその入り口の目印になってほしい。」
そういうと、少女はカボチャに名前を付けた。
”虫食い泣きぼくろのジャック・オー・ランタン”とな。
それからずーっと、そのカボチャは、長く世を見てきたが故の知識と、じい様や魔女の少女にもらった愛情とを、この森に逃げてきた吸血鬼や狼男やそういう者たちに分けてやって、腐ること無く、生き続けたんだと。
「ねえ、その泣きぼくろは今も生きてるの?」
とんがり帽子を被り、いたずらそうな目をした少女が問いかけた。
「さてなあ……どうだろうなあ。」
「もう、ごまかさないでよ!」
「リンネ、そろそろ帰らないと怒られるぞ。」
ふさふさの耳を持つ少年が迎えにくるまで、少女はここで物知りな彼の話を聞くのが日課になっている。
「少なくともな……」
「なあに?」
「そのカボチャも、ずいぶん年老いたが、やっぱり人に愛でられるのは嬉しいことだったんだよ。」
「答えになってない!」
少女はほおを膨らませ、彼は笑った。
「わしもずいぶん長い間忘れられていたが、お前達と話が出来て嬉しいよ……また来ておくれ。」
彼は空を見上げると、そのしわしわの顔をめいっぱい歪ませて、再び笑った。
すっかり世の中から忘れられた、深い深い森の入り口。
森の上には、魔女や蝙蝠男が飛び交っている。
住人も増え、入り口には滅多に人がこなくなったが、彼は今でも誰かに愛されている。
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泣きぼくろのジャック・オー・ランタンは、もとはずいぶん前に私が描いた絵です。
その絵には一応言葉が添えられていまして、今書くなら、こうなりますかね。
『
昔、たった一つの虫食いで捨てられてしまったカボチャは、すっかり長い間忘れ去られていましたが、魔女の少女と狼男の少年に見つけ出されたことによって、またその大きな口で自慢の知識を披露することになったのです。
二人が種族を超えて結ばれたあとも、彼はずっとそこにいて、誰かに愛され続けながら、みんなにたくさんの知恵と愛情を与え続けたのです。
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プロフィール
HN:
まめがら茶
性別:
女性
自己紹介:
色んな世界の物語を書いています。
大体は異世界・現代ファンタジー。
好きな小説は、
上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』、
荻原規子さんの『白鳥異伝』、
香月日輪さんの、大江戸妖怪かわら版シリーズ。
和を感じられるお話が好きです。
それから、アレックス・シアラーさんの『チョコレート・アンダーグラウンド』も、何度か読み返しました。
佐竹美穂さんの挿絵が小さい頃から好きだったのですが、
小学一年生の時に上橋さんの『虚空の旅人』と一緒に
分厚い上中下巻の『封神演義』を読んだのは無謀だったかな……
絵は、一番好きなのはアルフォンス・ミュシャ、特に『黄道十二宮』です。
大体は異世界・現代ファンタジー。
好きな小説は、
上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』、
荻原規子さんの『白鳥異伝』、
香月日輪さんの、大江戸妖怪かわら版シリーズ。
和を感じられるお話が好きです。
それから、アレックス・シアラーさんの『チョコレート・アンダーグラウンド』も、何度か読み返しました。
佐竹美穂さんの挿絵が小さい頃から好きだったのですが、
小学一年生の時に上橋さんの『虚空の旅人』と一緒に
分厚い上中下巻の『封神演義』を読んだのは無謀だったかな……
絵は、一番好きなのはアルフォンス・ミュシャ、特に『黄道十二宮』です。
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