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腐りかけの豆が、何ヶ月にいっぺん小説を吐き出す場。 主にtwitterに生息。 せめて2ヶ月にいっぺんくらいの更新に持っていきたい。
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 俺たちは、もう何十分も、勝敗がつかないまま、山札を引き続け、手札を捨て続けていた。


 変則ルールのポーカー。
 自分の手札の役が出来るか、山札が無くなるまで、何度でもカード交換をして良い。
 そんなルールにしたのは、この勝負で、凄く重要な、一生に関わるかもしれないことを、決めようとしているからだ。

 たった一勝で、一生が決まる。すまん、くだらなかった。



 俺の手札は、綺麗にハートの階段が出来ていた。
 ロイヤルストレートフラッシュ待ち。
 あと一枚。あのカードがくれば、俺は勝利する。
 俺が待っているのは、他のどのカードでもない。

 ハートのクイーン、ただ一つ。


 おそらく火野も、同じカードを待ってる。たぶん、捨てている物からすると、あいつはジョーカーも含めたクイーンのファイブ・オブ・ア・カインド狙い。札としては、あちらの方が上だ。
 俺たちは、山札を挟んで、にらみ合った。


 大学の寮のラウンジで勝負は行われている。
 二人とも気合いが入りすぎていて、山札を引く勢いが凄い。たびたび、周りの奴らが、いぶかしげな目でこちらを見ているが、気にしてなどいられなかった。

 こいっ。うわ、ダイヤの6。全然ちげーよ。

 こんどこそっ。ハートの7。フラッシュなんか求めてねえ!

 そんなこんなで、山札も四分の一程度になってきた時だった。

「お前ら、何してんの?」

 俺たちと同室の滝沢が話しかけてきた。

「今大事な勝負の最中なんだ。話しかけんじゃねーよ」

「そーだ、土田の言う通りだー」

「何が大事なんだよ……大事なことをそんなもんで決めるんじゃない」

 そういうと、滝沢はいきなり山札の下から5枚、引き抜いた。

 滝沢はこともなげにテーブルの上に広げる。

「男は、変なところにこだわっちゃいけない。重要なことはさくっと決めないとな。ストレート」

 本当の、ただのストレート。フラッシュもロイヤルもない。でもその中に、俺たちの求めていたハートのクイーンが微笑んでいた。
 にやっと笑う滝沢。一瞬言葉が出なかった。
 でもそれじゃあ駄目なんだと俺たちが反論し始めたとき、ラウンジの窓から、可愛いらしい顔がひょこっと飛び出して、滝沢君、何してるの、と話しかけた。


 今まさに俺たちが勝負をしていた理由、俺たちのアイドルの、花森さくら。


 俺たちは同じ人を好きになったことを知って、どちらが先に彼女に告白するかを、ポーカーで決めていたのだった。

「こいつらが、何か大事なことを決めてるってんで、邪魔してやった」

 そういって、思い出したとでも言わんばかりに手をポンッと打つと、滝沢は花森さんの頭をくしゃくしゃっと撫でてから、こう続けた。

「あ、そうそう。俺、花森と付き合うことになった」

 俺たちの心と長時間の勝負の意味は、あっさりと崩れ去った。

 これから放課後デートだと、手をつないで歩いていく二人の後ろ姿を、唖然として見つめる他なかった。


 

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photo by 七ツ森  /  material by 素材のかけら
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プロフィール
HN:
まめがら茶
性別:
女性
自己紹介:
色んな世界の物語を書いています。
大体は異世界・現代ファンタジー。


好きな小説は、
上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』、
荻原規子さんの『白鳥異伝』、
香月日輪さんの、大江戸妖怪かわら版シリーズ。
和を感じられるお話が好きです。

それから、アレックス・シアラーさんの『チョコレート・アンダーグラウンド』も、何度か読み返しました。

佐竹美穂さんの挿絵が小さい頃から好きだったのですが、
小学一年生の時に上橋さんの『虚空の旅人』と一緒に
分厚い上中下巻の『封神演義』を読んだのは無謀だったかな……

絵は、一番好きなのはアルフォンス・ミュシャ、特に『黄道十二宮』です。

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