ぼくらがロイとキイナに出会ったのは、本当に奇跡としか思えなかった。
ぼくらは、子ども二人、行くあてもなく彷徨っていた。
お金がないから、食べるものもなく、着ているものはボロで、夜は身を寄せ合ってなんとかしのいでいた。
でも、季節が冬に近づくにつれて、寒さも厳しくなり、ぼくの体力も限界に近づいていた。
このままでは、ぼくも妹のナジカも、死んでしまう。
そうやって途方に暮れていたあるとき、背の低いおじさんが僕らに声をかけてきた。
「お前さんたち、家はどうしたね?」
「家出してきたけれど、行くところがないんです」
ぼくが答えると、おじさんはにっこりと笑って、じゃあうちに来なさい、温かい食べ物をあげよう、といってくれた。
ぼくらは、特にぼくは相当弱ってた。だから、その親切が嬉しかった。
おじさんは、いろんなものを売る商人だった。
おじさんの家で2週間、食べ物をもらって、おじさんのお仕事のお手伝いをして、ぼくらは二週間前とはずいぶん見た目がかわった。
ナジカもぼくも、何も食べてなかったときよりずっと健康的になって、元気になった。
おじさんはそんな僕らに、きれいな服をくれた。
ナジカは、うす桃色で裾がふわふわしているワンピースをもらって、嬉しそうにずっとくるくる回っていた。
月がきれいな夜。
「ねえ、ナジカ」
ぼくが真面目な顔をして話しかけると、ナジカは、かわいらしい顔をきょとんさせて、首を傾げた。
「ぼくら、おじさんと出会ったのも、何かの縁だと思うんだ。これからも行くあてがないし……もし許しをもらえたら、ここで、おじさんの子どもとして、ずっとお仕事を手伝っていけたらいいなって思うんだけれど。ナジカは、どう思う?」
ナジカはにっこり笑って、何度も頷いた。
「よかった。じゃあ、明日、頼んでみようね」
そういって、寝ようとしたときだった。
遠くの方で、微かにおじさんが話している声が聞こえた。
「だれか、お客さんかな?」
ぼくらはベッドからそっと出て、声のする方に向かった。
おじさんは、男の人と話してた。
なんだか、少し興奮しているみたいだった。
その様子がちょっと怖くて、そっと近づいて、木の陰から様子を見ることにした。
「お前さん、そりゃないぜ!俺たちの仲じゃないか。それに、もっと高くたっておかしくねえ代物だぜ、ありゃあよ!」
ナジカもぼくも、首を傾げた。
そんなに高く売れそうなものがあるなんて、昼間は気づかなかったけれど……
「バカいうな、たかがきれいな顔立ちの子ども二人だろう。特に女の方は、もう少し出るとこ出てから売りな、あれじゃあ偏った趣味のやつにしか売れん」
「お前がよくつれてくる貴族様は、年端も行かねえ娘っこが好きだったろう?それにありゃあ、ただの娘じゃねえ。エルフの娘だ!」
ぼくらは、凍りついた。
ぼくらが家から出てきたのは、親に売られそうになったからだった。
ぼくとナジカは、血がつながっていない。
ナジカは、ある雨の日、ぼろぼろになって森で倒れていた。
ぼくは家に連れて帰って、一生懸命看病した。
ナジカが普通の人間じゃないのは、普段の様子からわかっていたけれど、ぼくはそんなの関係なく、ナジカを妹のようにかわいがった。
ナジカもぼくにすっかりなついて、どこへ行ってもぼくに付いてきた。
ナジカは最初から声が出なかったから、本当の名前はわからないけれど、見つけたとき、周りには、葉が大きく白い鈴みたいな花を咲かすナジカの樹が多い茂っていた。
木々はまるで、ナジカを守るように囲っていた。
だからぼくは、彼女を「ナジカ」と呼んだ。
ナジカも、そう呼ばれるのを喜んだ。
ぼくの親は、ナジカを最初に見たから、売ることを考えていたんだと思う。
ぼくも、いつか労働力として売るために拾われた子だったから。
ぼくはそれを知っていたから、ナジカと一緒に逃げたんだ。
なのに、こんなところでまた売られそうになるなんて。
絶対に、嫌だ。
「ナジカ……逃げよう」
ナジカは、青ざめた顔で頷いた。
そっと、ぼくらは後ろに下がろうとした。
かさり。
足下の落ち葉が、音を立てた。
「誰だ!……てめえら、聞いてたのか!」
ぼくらは、暗い森に向かってかけだした。
ぼくらは、子ども二人、行くあてもなく彷徨っていた。
お金がないから、食べるものもなく、着ているものはボロで、夜は身を寄せ合ってなんとかしのいでいた。
でも、季節が冬に近づくにつれて、寒さも厳しくなり、ぼくの体力も限界に近づいていた。
このままでは、ぼくも妹のナジカも、死んでしまう。
そうやって途方に暮れていたあるとき、背の低いおじさんが僕らに声をかけてきた。
「お前さんたち、家はどうしたね?」
「家出してきたけれど、行くところがないんです」
ぼくが答えると、おじさんはにっこりと笑って、じゃあうちに来なさい、温かい食べ物をあげよう、といってくれた。
ぼくらは、特にぼくは相当弱ってた。だから、その親切が嬉しかった。
おじさんは、いろんなものを売る商人だった。
おじさんの家で2週間、食べ物をもらって、おじさんのお仕事のお手伝いをして、ぼくらは二週間前とはずいぶん見た目がかわった。
ナジカもぼくも、何も食べてなかったときよりずっと健康的になって、元気になった。
おじさんはそんな僕らに、きれいな服をくれた。
ナジカは、うす桃色で裾がふわふわしているワンピースをもらって、嬉しそうにずっとくるくる回っていた。
月がきれいな夜。
「ねえ、ナジカ」
ぼくが真面目な顔をして話しかけると、ナジカは、かわいらしい顔をきょとんさせて、首を傾げた。
「ぼくら、おじさんと出会ったのも、何かの縁だと思うんだ。これからも行くあてがないし……もし許しをもらえたら、ここで、おじさんの子どもとして、ずっとお仕事を手伝っていけたらいいなって思うんだけれど。ナジカは、どう思う?」
ナジカはにっこり笑って、何度も頷いた。
「よかった。じゃあ、明日、頼んでみようね」
そういって、寝ようとしたときだった。
遠くの方で、微かにおじさんが話している声が聞こえた。
「だれか、お客さんかな?」
ぼくらはベッドからそっと出て、声のする方に向かった。
おじさんは、男の人と話してた。
なんだか、少し興奮しているみたいだった。
その様子がちょっと怖くて、そっと近づいて、木の陰から様子を見ることにした。
「お前さん、そりゃないぜ!俺たちの仲じゃないか。それに、もっと高くたっておかしくねえ代物だぜ、ありゃあよ!」
ナジカもぼくも、首を傾げた。
そんなに高く売れそうなものがあるなんて、昼間は気づかなかったけれど……
「バカいうな、たかがきれいな顔立ちの子ども二人だろう。特に女の方は、もう少し出るとこ出てから売りな、あれじゃあ偏った趣味のやつにしか売れん」
「お前がよくつれてくる貴族様は、年端も行かねえ娘っこが好きだったろう?それにありゃあ、ただの娘じゃねえ。エルフの娘だ!」
ぼくらは、凍りついた。
ぼくらが家から出てきたのは、親に売られそうになったからだった。
ぼくとナジカは、血がつながっていない。
ナジカは、ある雨の日、ぼろぼろになって森で倒れていた。
ぼくは家に連れて帰って、一生懸命看病した。
ナジカが普通の人間じゃないのは、普段の様子からわかっていたけれど、ぼくはそんなの関係なく、ナジカを妹のようにかわいがった。
ナジカもぼくにすっかりなついて、どこへ行ってもぼくに付いてきた。
ナジカは最初から声が出なかったから、本当の名前はわからないけれど、見つけたとき、周りには、葉が大きく白い鈴みたいな花を咲かすナジカの樹が多い茂っていた。
木々はまるで、ナジカを守るように囲っていた。
だからぼくは、彼女を「ナジカ」と呼んだ。
ナジカも、そう呼ばれるのを喜んだ。
ぼくの親は、ナジカを最初に見たから、売ることを考えていたんだと思う。
ぼくも、いつか労働力として売るために拾われた子だったから。
ぼくはそれを知っていたから、ナジカと一緒に逃げたんだ。
なのに、こんなところでまた売られそうになるなんて。
絶対に、嫌だ。
「ナジカ……逃げよう」
ナジカは、青ざめた顔で頷いた。
そっと、ぼくらは後ろに下がろうとした。
かさり。
足下の落ち葉が、音を立てた。
「誰だ!……てめえら、聞いてたのか!」
ぼくらは、暗い森に向かってかけだした。
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プロフィール
HN:
まめがら茶
性別:
女性
自己紹介:
色んな世界の物語を書いています。
大体は異世界・現代ファンタジー。
好きな小説は、
上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』、
荻原規子さんの『白鳥異伝』、
香月日輪さんの、大江戸妖怪かわら版シリーズ。
和を感じられるお話が好きです。
それから、アレックス・シアラーさんの『チョコレート・アンダーグラウンド』も、何度か読み返しました。
佐竹美穂さんの挿絵が小さい頃から好きだったのですが、
小学一年生の時に上橋さんの『虚空の旅人』と一緒に
分厚い上中下巻の『封神演義』を読んだのは無謀だったかな……
絵は、一番好きなのはアルフォンス・ミュシャ、特に『黄道十二宮』です。
大体は異世界・現代ファンタジー。
好きな小説は、
上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』、
荻原規子さんの『白鳥異伝』、
香月日輪さんの、大江戸妖怪かわら版シリーズ。
和を感じられるお話が好きです。
それから、アレックス・シアラーさんの『チョコレート・アンダーグラウンド』も、何度か読み返しました。
佐竹美穂さんの挿絵が小さい頃から好きだったのですが、
小学一年生の時に上橋さんの『虚空の旅人』と一緒に
分厚い上中下巻の『封神演義』を読んだのは無謀だったかな……
絵は、一番好きなのはアルフォンス・ミュシャ、特に『黄道十二宮』です。
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